日本の完全勝利という評価をした全日本剣道連盟の総評で幕を閉じた世界大会。
試合内容や選手選考における記者会見など大会以外にも色々感じた部分がありました。
大会開催地である現地には直接行ってませんが配信で観戦した感想や感じたことなどを綴ってみます。
ネットで炎上した監督前列・選手後列の集合写真
SNSでとあるユーザーが世界大会の選手団(監督コーチも含む)写真が公開され、選手が後ろで監督コーチ陣が前である写真に違和感を覚える人たちで炎上した。
炎上した記事詳細はこちら↓

この感覚は剣道を長くやっている愛好家たちはさほど違和感は感じないようであったが、現世代の方は一般的な人から見ると違和感にしか映らなかったようです。
選手ファーストではないことで日本スポーツは過去も炎上した経緯があることを考えると、炎上するのは否めない印象であった。世界大会選手団写真として紹介をするのであれば、監督を含めた集合写真ではなく選手だけで良かったのかもしれない。
SNS上や広告用写真掲載には配慮がすぎるぐらいの注意を払わなければならないのは鉄則ではあるが、その細心の注意がなかったことが原因だったと思う。
とはいえ、こうした現状を見ても武道ならではの世界は現代社会から少しづつ離れていく印象があったし、こうした小さなところで剣道離れが進んでいる要因の一つかもしれない。
大会前だというのにネットで写真で言われもしたくないようなことを言われてしまうのは選手がかわいそうだなという思いだったし、この記事によって要らぬフラストレーションを感じる選手もいたであるうことを考えると本当にかわいそうでならない。
今後の発表ではぜひ選手に影響が出ない形で対策ができてほしい。
世界大会の審判のレベルアップ、人材活用が良い印象だった
大会に話を戻す。今回の大会で特に印象に残ったのは審判のレベルが上がっていたことだ。七段以上の審判団で構成され、男女ともに活躍していたことはとても好印象であった。
いつも世界大会では誤審が多いとか審判の旗が軽いなどのコメントが多く見られており、今回もyoutube上のライブ配信ではそのようなコメントが多くあったが、今回の試合では以前の試合よりもレベルは確実にアップしていたように思う。
多少打突基準の甘さなどはあったとはいえ審判の位置どりや暫定ルールの対応などについては海外の審判も理解が難しい場面が多くある中で、懸命に取り組む姿が見られた。
つばぜりの反則については実際に国内の試合を見ても反則を取れない試合はいくつも見てきているし、日本の試合においても判断基準が難しい中、海外の審判は言語が違う中でよく頑張って理解をしようといている。
試合を見る限り、日本の選手に旗が軽いなという試合はいくつかあったし、それがなければ負けていたであろう試合もあったように思う。これはおそらくではあるが、日本の選手が海外の選手に比べてスピード感などが違う、打突が当たったように見えるのが要因であろう。
審判の位置どりに関しては、私見ではあるが先の全日本女子選手権よりも世界大会の審判団の方がかなり優れていたように思う。連盟が行ってきた世界大会に向けた各国での審判講習の取り組みが生きていたのではないだろうか、大会での審判講習もおそらく懸命に理解をしてもらうために取り組んだのではないだろうか。
また、審判の活用においても女性審判を構成して配置していた点においては世界大会ならではという感じを受けたし、人員確保の上手いやり方であると感じた。七段の女性審判は日本の先生方が多い印象ではあったが、構成された人を見るかぎり世界大会経験者や日本でトップで活躍してきた審判であることから他の審判に劣るというような点はなく、審判を見るかぎりでは全日本選手権も八段以上ではなく七段以上でも審判技量に長けている審判は起用してもいいのではないかとも思ったほどだ。
すぐには難しいかもしれないが、男子の選手権も審判技量に優れている七段であっても起用してもいいのではないかと思う。高齢で見極めができない八段審判よりよっぽどいいと個人的には思う。
この審判の様子を見て思うことは世界大会での審判レベルを向上させるためには、海外の審判が自ら勉強してもらうだけではなく、各海外の大会で日本のトップで審判を指導している指導者の派遣をさらに強化し、通訳などを介さずに日本と同じように講習会で全てを説明できる人材を育成していくことではないだろうか。
男子の完全優勝。しかし素朴な疑問も
出場できなかった選手がいたのはなぜ?
男子団体、個人と完全優勝を果たした日本。完全優勝した最近の試合ではないのではないだろうか。激闘を繰り広げた選手たちの活躍には本当に感動をした。
そんな中で選手の起用については大会当日に国友選手と土谷選手の起用がないことが発表されたことは驚きであった。剣道雑誌を見てもなぜ起用がされなかったのかということについては触れられていない。おそらく詳しい理由はインタビューを見る限り選手たちも知り得ない状況だったと思われる。
上の判断でそうなったのであろう。
選手たちも動画のインタビューを見る限りかなり驚いたようだ。当然ネット界隈の観戦者たちも起用されない疑問についてはコメントにてかなり白熱していた。
コロナの陽性反応が出たのか、大会での選手のコンディションが悪かったのかどうかはわからないが一回も試合に起用されないのは、今まであまり記憶にはない。試合後の発表などを見ても特に理由は述べられていなかった。
動画での両名の選手は少なくとも私は優勝して嬉しそうな顔はしていなかったように感じる。国友選手は全日本を優勝し、土谷選手は警察大会を優勝している選手だ。
試合経験をつけさせるために若手を起用したかったのか、選手起用でのミスなのか構想があったかどうかはわからないが、第一線での活躍をしていながら一度も起用されない選手の価値ってなんだろうと疑問に残った大会であったことは間違いない。
全日本で優勝しても起用されなかった選手がいて、全日本優勝していない、けど起用された選手がいる世界大会の選手選考基準は出場する選手にとって精神的負担を強いられるなと感じた出来事であったように思う。
この事実を少年たちはどう受け止めているのだろうか。結果を残しても報われない世界があるのは大人になれば誰でも経験することではあるが、少年たちの夢を奪ってしまう行為にならないだろうか。
夢を与えるはずが、結果を出しても報われない世界の一面を見せた部分であった。せめて一人1回は出場させることはできなかったのだろうか。
韓国へのイメージ変化、攻防をみて感じたこと
今回韓国のトレンドマークであった白袴にストライプ、白胴着がなくなり紺に統一された。韓国の剣道に対する認識の改めが示されていたように思う。試合内容も以前のように荒々しいやり取りが少ない印象であった。コロナ暫定ルールの影響もあるのかもしれないが、韓国の剣道に対する姿勢は評価したい。
日本の選手団は負けられない戦いの中で必死であったと思う、必死が故につばぜり時の首に竹刀をかけて相手を崩すだけの行為が多く見られたが、非常に印象がよくなかった。本当によくなかった。技を出すための行為であれば何ら問題はないのだが、相手を崩すだけの行為は海外選手から見るとケンカを売っているように見られるし審判からの印象もよくないように映った。正直、個人的にも胸糞悪い。
綺麗に勝つことが難しい試合であることは理解しているが日本には横綱のような試合をして欲しいと感じたのが全体の印象である。
試合自体は日本の完全勝利で終わったが、中堅戦での韓国の試合対応はかなり流れを変えた場面であったし、完全に韓国優勢の試合運びであったように思う、海外の選手は上段に対する対策ができないことが多いことから男子も女子も上段の選手起用することがよくあるが、今回の韓国の選手は上段に対して対策をできていたように思うし、もしかすると今後上段に対する対応が上手い選手が多くなっているかもしれないと思わせる事案であった。
副将戦のLee選手が放った面で流れが一気に韓国優勢に見えるほど流れが動いていた。小手を返した場面では韓国はかなり納得いってないようであったが映像を見る限りでは日本に対して旗が軽い場面であったように思う。副将戦においてはもう少し審判の見極めどころが欲しい試合であった。
女子の部・全体的なレベルアップを感じた
女子個人戦・末永選手への期待
女子個人は最年長に末永選手が選出。昨今の35歳以上の選出には驚いた人も多かったのではないかと思う。
女子は比較的若手の選手を起用することが多く、今回の大会は世界大会経験者を多く起用していることから比較的年齢層が高めになっているのはあるのだが・・・。
比較的若手有望な選手を起用していく女子の傾向に反してベテランの末永選手が個人に起用されたのは過去の大会でも個人戦準優勝であったことから、今回の大会では個人優勝をして欲しいという期待や思いがあったように感じられた。
今回の世界大会は総監督の濱崎先生・女子監督である竹中先生・高鍋先生がPL学園出身であり末永選手もPL出身なのである。過去PL出身者で世界大会女子個人優勝は誰も達成がされていなかったこともあり(多分)、PL関係者としてはぜひ優勝して欲しいという期待もあったであろう。
そうした関係者の期待もこめられた選出だったのではないかと感じたエントリーであった。
結果的に準優勝ではあったが、最年長、しかも警察を退職し環境が激変した中で本当に素晴らしい試合を展開してくれたように思う。
海外の選手は確実に成長している
女子個人・団体を見ても全体的にレベルが上がってきている。日本の選手との差はまだあるが将来的に差が縮まっていくであろうと感じられた。
女子個人においては近藤選手とカナダのB.PARK選手との試合はその片鱗を見た試合であったように思う。
過去日本大会での韓国の強さが脅威だと感じていたが、今回はメンバーが変わったことからあまり目立った活躍がなかった。コロナで年数が経ってしまったことも影響しているかもしれない。
今後は韓国だけではなく欧米の選手も脅威になってくるであろう。
世界大会のあり方を考えさせられた大会だった
最近の世界大会の動向を見ていると以前とは流れが変わってきているように感じる。
オリンピックの柔道のようなスポーツのような流れが出てきているように感じるのである。大会でのブーイングや試合に対する態度において礼儀を重んじる剣道からかけ離れている。
一つは台湾大会で男子団体で日本がアメリカに負けてから世界大会では何としてでも負けられないというプレッシャーが強くなった。このプレッシャーにより競技の側面がかなり強くなったと思う。
もう一つは世界大会がネット配信されるようになって身近になり、海外と同じように熱狂し日本ですらスポーツ化してきている現状が見え隠れしてきた。
このまま世界大会のスポーツ化の流れはおそらく止めるのは難しい。競技性が強くなっていくにつれて剣道も柔道のようになってしまうのは時間の問題かもしれない。
世界大会のあり方については今後もう少し深掘りしながらまとめていきたいと思う。
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