剣道界の目標にも掲げられている「剣道普及」
今、日本は超高齢化社会・少子化問題を抱え、その影響もあり剣道人口は減少傾向にあります。
これから剣道人口を維持をしつつ、剣道普及していくためには、どのような取り組みが必要なのか、普及しない要因は何か、継続していかない要因は何かを考えてみました。
ただ怒る指導はしない
道場・中学・高校の部活・大学・社会人どのステージ上がってもただ怒る指導をするという時代はもう終わりました。
剣道を始めることが多い道場や、学校の部活においてはこの「ただ怒る指導」からの脱却が一番重要かと思います。
今、子供を持つ世代は昭和世代から平成世代へと変化してきています。平成世代は怒られて育つ概念があまりありません。自由にのびのびと育ってきている世代といえます。昭和世代のように殴られたり、怒鳴り散らされたりしてきた経験が少ない世代です。
その世代が親となり、子供を育て、古典的な指導をする道場へ行くと剣道離れしてしまうのは当然の流れです。
昨今では怒らない指導をすることで、道場の存続ができる時代となってきました。現代は怒る指導や根性論などの古い考えを持つ指導者や道場はどんどん淘汰されていく時代です。
ただ、ここでの怒らない指導というのはなんでもかんでも怒らない指導をするということではありません。倫理やコンプライアンスに基づいた指導をするということです。
道場内でのいじめや、稽古による上級生が下級生に対するいじめなどについては当然ですが怒らなければなりません。
今一度、人間形成とは何か、正しい剣道とは何かを再定義する必要があるのではないでしょうか。
保守的な指導を改善していかなければ、普及・継続はしない
道場や部活、社会人などの指導をみてきた中、昔に比べて改善はされてきましたが、依然として保守的な指導や軍事的指導が非常に多いように思います。
十数年前に比べると暴力的な指導などは改善されつつも、いまだにKKD(勘・経験・度胸)と言いた昭和のノウハウを用いている指導者がいます。
稽古内容においても、旧来型のとにかく稽古をする。トレーニングや休養、栄養学といった科学的根拠に基づいた要素は取り入れることはなく肉体的にも精神的にも負荷をかけるだけの稽古が主流となっている指導が多くみられます。
指導する際の説明においても、精神論や根性論、指導者の経験に基づく指導が多く見られ生徒の特性を活かした指導や各ステージに適切な指導などはあまり聞いたことがありません。(一部の指導者には科学根拠に基づいき工夫をされている指導者もいます。)
また、セクシャルハラスメントやパワーハラスメント、人格を否定するような言葉、暴力を振るう、稽古で痛めつけて反省させる、練習試合、試合の場において勝負至上主義の考えから会場で怒鳴り散らす、暴力を振るうなどといった指導をする指導者も多くみてきました。
このような指導をしてはいけないのはもちろんですが、大会会場での指導についてもあらかじめ言及や対応する組織を作り徹底する。厳正な処罰を行うルールを設ける(段位剥奪とか段受験年数延長とか)、指導ガイドラインブックを作成し、発行を行うなどの対策をしたほうがよいと思います。
講習会だけは指導改善は限界がある
普及や講習会指導については社会体育指導養成にも盛り込んではあるのですが、それだけではなく段審査を受ける条件として必ず講習を義務付けることをしない限り広がっていくことはないと思います。(四段くらいから受講が望ましい)
段審査に講習を盛り込めば、段審査と同じ開催日であれば会場を段取りする手間も省けますし、人員も審査する先生であれば余分な人件費はかかりません。その講習代を含むことで全剣連の収支もプラスに働く可能性もあります。
また、暴力的な稽古や指導などといった取り組みは根絶していくことを徹底するための講習会も必要になってくると思います。
組織構成で外部の人を入れノウハウを蓄積する
現在の剣道界組織は、すべてではないですが剣道を第一線で活躍してきた人で構成されています。
剣道界隈で特化してきた人が組織の中心で構成されることに対して悪いというわけではありません。
普及や指導に関しては、その分野で研究・実際の現場で検証し研究や論文を書いている人や、異分野でも指導と普及に関して第一線で活躍している人に立ってもらい推進してもらう必要があると思います。
剣道業界全体も保守的な部分があるので、異分野の意見を取り入れることは現実的には難しいかもしれませんが、改革をしていかない限り大きな改善をしていくことは非常に難しいと思います。
これからは様々な分野で剣道に携わっている人を構成員に盛り込んでいかない限り、組織の考えは変わりませんし、新しい取り組みのアイディアも出ることはないでしょう。
トップダウンで業界を動かすには必要な要素ではありますが、それだけではなく外部のノウハウを取り入れてよくしていく取り組みは決して無駄にならないと思います。
まずは剣道での実績を残してきた人ではなく、指導や普及といった研究分野で実践してきている人の任用を期待します。そして徐々に様々な分野から新しい取り組みに必要な人材を選定していき保守的な組織からよりよくしてほしいと願っています。
子供に剣道をさせたいと思わせるマーケティングが必要
剣道を始めるきっかけは親が剣道経験者、道場がたまたま近くにあった、友達から誘われた、剣道が盛んな地域、部活動で選択したのが剣道だったなどが挙げられます。
世の中で子供に習わせたい分野では、剣道はかなりマイナーでその存在自体を知っている人が少ないのが現状です。
以前、るろうに剣心や鬼滅の刃などのアニメで剣道ブームが少しありましたが、サッカーや野球に比べて認知度はまだまだ少ない状況で以前として減少傾向にあります。
どのように発信、宣伝すれば剣道をしたいと思うのか、剣道に対するイメージはどのように持たれているのか調査するなどといったマーケティング要素もこれからは必要になってくると思います。
<すぐできそうな取り組み>
・日本代表選手や元日本代表選手による全国各地の講習会や出身学校への訪問、講演、剣道をすることでどのような経験やメリットがあったか
・警察官や自衛隊などの就職を考えている小中高生へ就職時へのメリットを話す機会を設ける。
・女性剣道経験者および元経験者への普及、宣伝。女性剣道大会の開催を増やす。気軽に参加できる講習会などを新しく作る。
・親子でできる剣道イベントや剣道未経験者へ剣道が手軽に経験できる体験できるイベントやワークショップの開催。
・剣道未経験者への0→1の開拓。まずは手ぶらできてもらって体験できるイベントや機会を設ける。
すでにやっている自治体もあればできていない自治体もあります。全国一斉にすぐにはできないかもしれませんが、ITなどの活用でどんどんできることは増えています。まずは市や県といった小規模での取り組みから全国に広がっていくという形で期待したいです。