野球のWBCでの優勝の興奮がまだ冷めやらぬ状況ですが、この試合を見ていて学べる点が非常に多いものがありました。
それは栗山監督の「選手を信じる力」が一切ブレなかったことです。
私は監督業において、この選手を信じる力が一番大切だと思っています。なぜこの信じる力が大切なのかを私なりに分析してみようと思います。
監督の不信感は選手に伝わる
これはどんなベテラン監督であろうと、新米監督であろうと関係がありません。これは人と人の関係性に近いです。
監督が少しでも選手に対して不信感を抱くと選手は敏感な人が多いためすぐに気付きます。不信感を抱いているとちょっとした言葉尻に現れたり、行動や目線などに動きがでます。
日頃から接している選手はそうした行動を見逃しません。なぜなら毎日監督の指導を聞いて表情や言動を聞き漏らさないようにして稽古に取り組んでいるからです。
例え自分が出ていないだろうと思っていてもそれは単なる思い込みでしかなく、無意識のうちに選手に対して不信感があるような行動をとっていることが多いのです。
一度崩れた信頼関係というものは簡単には修復することができません。選手が強靭なメンタルの持ち主であれば良いですが、そのような選手は少ないと思います。
監督はいついかなるときも不動心でなければなりません。
選手メンバーによって力の入れ方を変えてはいけない
選手のリクルートをしていると選手が集まらなかったり、リクルート活動をしていると必ず年によって選手は集まったけど他校に比べると戦力的に劣るなどのバランスが取れない時があります。
その時に監督が強い選手が集まった時にはものすごく力を入れて、選手が集まらない時は力を入れないなどという指導にムラがある人がいます。
強豪校の監督に多い傾向があると思うのですが、これが監督の中で最もやってはいけない行為だと思っています。
不信感を仰ぐどころかそのメンバーでは勝てないと戦う前から決めているからです。
WBCでは大谷選手が高校時代に「先入観は可能を不可能にする」という言葉を恩師からもらい、その話を決勝前にしたエピソードがありました。
メンバーが集まらないからといって、最初から今年は勝てないなと思った時点で、何をやっても勝てないのです。
どんな戦力でも選手の層が薄くてもチームが揃う限りはその人材の特徴を生かしてやっていかなければいけません。どんな状況でも常に全国で勝てるチームを育て上げることができるのが真の監督です。
選手が不調でも使う理由
WBCでは、村上選手が不調で苦しんでいましたが栗山監督は村上選手を使い続けました。
4番バッターから5番には変更しましたが、吉田選手が好調だったということも関係しています。決して不調だから変えたというよりは、吉田選手が絶好調だったということです。
もし村上選手が変更されたりした場合、もしかしたら日本は優勝をしていないかもしれません。ではなぜ栗山監督は使い続けたのか、おそらく栗山監督は最初から誰が不調でも自分が選んだ先発の選手などを変更するつもりはなかったと思います。
そのぐらい選手を信じていましたし、何よりも結果を残している村上選手への信頼があるからです。記録を打ち立てる前もなかなか打てないで苦しんでいましたが、最後には王さんを超える記録を打ち立てました。
栗山監督だけではなく、周りの選手も村上選手を認めていましたし信じていました。あそこでもし変更していてはチームの雰囲気などもきっと崩れていたでしょう。
プロ選手なので、結果を残せない場合はすぐに変更をするという手段を取らなければならない場面もありますが選手を変更しない、変更するの判断は大きく2つの要因で決めて良いと考えています。
1.選手が圧倒的な力を持っている場合は変更しなくて良い
2.選手の変更によってチームのバランスが崩れたり、雰囲気が悪くなる場合は変更しなくて良い
剣道は個人競技ですが、団体戦の時はこのバランスが最も重要になります。特に女子の場合はこのバランスが勝敗を分けるといっても過言ではありません。
守谷高校・塚本監督が講演した選手を信じる大切さ
第32回全国高等学校剣道選抜大会で優勝した守谷高校・塚本監督が過去に講演した動画で選手を信じる大切さを述べている動画があります。非常に参考になるのでぜひみてみてください。
結論 監督は選手を信じるのみ
試合をするのは選手です。団体の采配がどうであれその采配によって勝てるかどうかというのはあまり関係がないように思います。
監督が試合でできるのは感情を出さないこと、選手を信じることだと思っています。
今回のWBCの栗山監督の姿は全国の監督の人の最高のお手本だと思います。
監督が勝利を信じて、選手が勝利を信じて取り組めば思いがけないドラマが生まれます。今監督とはどのような立ち振る舞いをしなければならいのかがわからない人は、ぜひ選手を信じるところから始めてみてください。